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記録

 

 

 台風の過ぎた後の綺麗な夕焼けが窓から見えた。

青空に赤ワインをこぼして、太陽の代わりに目玉焼きをのせたような空。

 アスピリンの存在を知らずに育ったせいで、それを知った時、手放す事が難しかった。寝床から起き上がると、二錠の薬を飲み込んだ。喉に異物感があった。

そのあと、コップに水を注ぎ、流しこんだ。たいていの寝起きに頭痛はつきものだ。

これが頭痛なんだと知るまでに十七年の月日を必要とした。誰にも打ち明ける事もないまま。寝間着を脱ぎ捨てパンツを履かずにズボンをはいた。そこらに脱ぎ捨ててあった、赤と黒、グレーのボーダーラインの服を着た。

机の上に置いてある財産と、アスピリンをポケットにねじ込んだ。

 そのまま、歩いて駅へ向かい西を目指した。

途中「汝の隣人を愛せよ」と言う聖書の一説を思い出し、「隣人が誰か知らないんですけど。」と口に出して言った。

 駅では数人の白人が大きなリュックサックを背負い、ベンチに座っていた。途方に暮れている様子だった。直感で生きている、綺麗な白い猿。切符を買ってから電車が来るまでの間に、タバコを吸うサラリーマンに声をかけ、

タバコを貰い吸った。メンソールだった。

時間ギリギリに電車へ飛び乗ると、この時間には似つかわしくない、化粧をした女がいた。ハイヒールの高さだけが、彼女を物語っていた。それから、アイラインのひきかたが田舎者だった。私は車中、社会から完全に投げ出されていた。

 価値と値段の真理、陳腐な物語を含む関連性全てにうんざりしていた。

ビタミン、星占い、ポップミュージック、男と女、精神医学。それから水商売、アイドル、人種差別。隣街に到着すると、太陽が沈みはじめ濃い紫色をしていた。空の観察ばかりをしてしまうのは、悪い癖だ。

 ひたすら歩き、何度が行った事のあるバーへ入った。店員以外だれもいなかった。

ビールを二杯飲み、その後スコッチを四杯飲んだ。気づいたら、三時間近く経過していた。客もまばらに入って来たが、話す気にもなれなかった。

 チェイサーでアスピリンを飲み込み、更にスコッチを飲んだ。

誰も邪魔してくるヤツはいなかった。店員兼店長の女二人組はできてた。それは前から知っていた。私は相変わらず頭が痛かったので、再度アスピリンを酒で流し込んだ。