捨ててつくる
昨年、ほとんどものを買わないで手放すことに集中していました。
しかし、みぎ横の棚にはぎっしりつまったレコード。逆の棚には漫画と本がつまっている。
好きな音楽や本とかがたくさんあるのは結構なのですが、一年を通してそれ全部をみたりきいたりすることはない。
持っておきたいものがあるというのはとっておけばいいし、無理して捨てることはない。なるべくことしもものを買わずに過ごせたらと勉強しました。
その代わりにといってはなのですが、つくるってことをはじめようかと思っているのです。洋服とか、本。音楽も自分が一番しっくりくるものを探すよりも作った方が早いということに行き着きました。時間はかかるかもしれないけど、やってみる。
やってみよう。やる。
sect
ぼくはどちらかといえば左翼よりの人間だ。
きっかけはわが闘争を読んでからか、高校ん時ね。
でも、本当の本当のことは人に会うときは演技をしないとダメで。
例えば、今日はこの人と会うからちょっと、極左発言を多めにすれば盛り上がるな。
とか、考えている。
だから実際政治に関してなにも発言力のない中での左翼プラスチックなのである。
まじでまじのことをいうと、実際は人々が興味あることにはもう興味がなくなっている。でもこうやって逃げ道を作っていることは自己保身でもある。
まぁ反するから結局はリベラルなのかもしれない。みたいな堂々めぐりウェルカムジャパン。
けどずっと人々はずっと考えているよりも、そんな人間相手にしない。
純粋で真面目な会話をすれば友達は減っていく。
あぁ、みんなそういう会話しないんだ。て
気づいたときにはもう誰も周りにいなくなっていた。
だから、興味がなくなった。インスタントな会話を楽しんでいこうと思うこの頃なのでした。
テルミーモア
年末の暮れに旧友に会う。熱海で。
一方的に話して一方的に疲れて候。
筋をまとめてその通りに話して組み立てていく力がない。
なぜならぼくは談志のような芸人ではないからね。
最近よくテレビをみる。なんだか、とりつかれたように。
物事の本質がもしかしたらここにあるんじゃないか?
なんて、半分迷走している気がするけど。
それでも飲み続ける人々は。
魚が何万年も釣竿と針にやられているように、酒を飲み続ける。そして繰り返す。
労働、仕事の価値は?また二人でお酒を飲んであれをする。
その場限りの贅沢や、ひとしずくのインク。あるいはそのにじんだ半紙。
それはこの世の縮図。いいかげんな終末論。まだまだ繰り返す。
瞬発力で生きるカメラマン、持続力で生きるななしのごんべえ。
吹き続ける北風に立ち向かっていく。炊き出しに浮かぶほこり。
コントラストがどうも愚鈍。シャケのジャンプを。
これからも言葉に救われ続けるのでしょう。
というダダイズム。
またかよ!
透明のすいみん
(浮遊している感覚、青白い四月の空のイメージ。)
最初は黙りこくりながらスコップで小石をかき集めていた。
…私がこの炭坑で働き始めたのは二日前だ。今日で三日目になるわけだけど。
毎日、石をスコップでかき集め、出すという作業を八時間やっている。
ミッキーという男も僕と同じ作業をしていて、そいつは私より一時間早く来る。ミッキーには家が無く、炭坑から歩いて二十分の公園に寝泊まりしているらしい。そのせいか、やる事も無いので早く来て、石をかき集めている。作業に終わりは見えてこない。
トンネルをどこまで掘るのかは、ボスが決める事だ。
僕はこの作業をしている時はなるべく、心を無にするように心がけた。「俺は機械だ。俺は機械だ。」とぶつぶつ自分に言い聞かせていた。
その内、本当に機械になったような気がしてしまい、いつの間にか動きがロボットのようになってしまっていた。動作をする度に小刻みに震えるのがコツだ。
一時間早く来ようが、機械になろうが当然、僕たちの給料は一緒だ。週に五日出て四万五千円の給料を得る事が出来る。週払いで、ミッキーはその金をほとんど競馬に使ってしまう。高額当選した金も、競馬や酒、さらには女に消えてゆく。彼の中で人生は生きるか死ぬかの一瞬の出来事の連続なのである。
彼にとって帰る場所は必要なかったのだ。それが、彼にとっては当たり前であり、アイデンティティなのだ。
彼は今年四十八歳になると人づてに聞いた。浅黒く日焼けしており、いつもニコニコしていて前歯が二本抜けていた。不細工だった。不意にミッキーが詰問してきた。
「なぁアンタを観てると、昭和歌謡を思い出すんだ。」
僕は「そうかい?」と言った。
「あぁ、そうさオマエの宇宙から昭和歌謡のエネルギーが溢れ出ているんだ。」
「一曲歌っていいかな?」
「あぁ。いいとも」
「思い出したんだとさ 会いたくなったんだとさ~」と歌い始めた。
僕は黙々と仕事を続けた。彼は歌い続けた。ボスが
「コラっ!クソ親父!歌ってないで仕事しろ!」と叱責した。
ミッキーは歌を辞めて「あんた若いのになんでこんなつまんない仕事してんの?」と聞いてきた。
「うるさいよ、他にどうしろってんだ?」
「神は他に道があるぜと言っているよ。」
「なぁ、アンタは神を信じるのかい?」
「いいや」
「じゃあ何を信じるんだい?」
「なにも」
「お互いさまだな。」
僕は給料を貰い、この仕事をそのまま辞めた。今では、求人広告を片手にパソコンの液晶に向き合っている。
その後、僕は彼の事の一切を思い出す機会はなかった。
しかし、彼だけは、百パーセント自分がそこに居た。他のヤツは十パーかそんくらいだ。自分の事は解らない。他人が勝手に決めてくれれば良い。
僕はポートワインを三本買って来て机に並べた。残金はほとんど尽きていた。
十分でワインを一本開けると、あるパルスが脳内を走った。
年齢を重ねるごとに、嘘でも頭を下げて「すみません」と言いたくない。
嫌疑の感情がこもったパルスが走った。
天国から降り注ぐ槍で月を打ち抜いて、落ちてくる結晶で、古びたモダンジャズの真似事をする前に。
常に何かが足りなかった。もっと酔ってしまう必要を感じた。若者は自分が思っているよりも、考え方は退屈だった。後ろを振り返っても、もう誰もいなかった。一人くらいいるとは、思っていたけど。誰も全くいなかったんだ。
(やがて幕は下り、白い目覚めへと導かれる。)
記録
台風の過ぎた後の綺麗な夕焼けが窓から見えた。
青空に赤ワインをこぼして、太陽の代わりに目玉焼きをのせたような空。
アスピリンの存在を知らずに育ったせいで、それを知った時、手放す事が難しかった。寝床から起き上がると、二錠の薬を飲み込んだ。喉に異物感があった。
そのあと、コップに水を注ぎ、流しこんだ。たいていの寝起きに頭痛はつきものだ。
これが頭痛なんだと知るまでに十七年の月日を必要とした。誰にも打ち明ける事もないまま。寝間着を脱ぎ捨てパンツを履かずにズボンをはいた。そこらに脱ぎ捨ててあった、赤と黒、グレーのボーダーラインの服を着た。
机の上に置いてある財産と、アスピリンをポケットにねじ込んだ。
そのまま、歩いて駅へ向かい西を目指した。
途中「汝の隣人を愛せよ」と言う聖書の一説を思い出し、「隣人が誰か知らないんですけど。」と口に出して言った。
駅では数人の白人が大きなリュックサックを背負い、ベンチに座っていた。途方に暮れている様子だった。直感で生きている、綺麗な白い猿。切符を買ってから電車が来るまでの間に、タバコを吸うサラリーマンに声をかけ、
タバコを貰い吸った。メンソールだった。
時間ギリギリに電車へ飛び乗ると、この時間には似つかわしくない、化粧をした女がいた。ハイヒールの高さだけが、彼女を物語っていた。それから、アイラインのひきかたが田舎者だった。私は車中、社会から完全に投げ出されていた。
価値と値段の真理、陳腐な物語を含む関連性全てにうんざりしていた。
ビタミン、星占い、ポップミュージック、男と女、精神医学。それから水商売、アイドル、人種差別。隣街に到着すると、太陽が沈みはじめ濃い紫色をしていた。空の観察ばかりをしてしまうのは、悪い癖だ。
ひたすら歩き、何度が行った事のあるバーへ入った。店員以外だれもいなかった。
ビールを二杯飲み、その後スコッチを四杯飲んだ。気づいたら、三時間近く経過していた。客もまばらに入って来たが、話す気にもなれなかった。
チェイサーでアスピリンを飲み込み、更にスコッチを飲んだ。
誰も邪魔してくるヤツはいなかった。店員兼店長の女二人組はできてた。それは前から知っていた。私は相変わらず頭が痛かったので、再度アスピリンを酒で流し込んだ。
ある日の話し4 終わり
外に出ると風が突き刺さるような、寒さだった。痛風に悩まされる人間の気持ちがわかった気がした。
その日は工場で8時間の仕事をした。誰もが怠そうに働いていた。しかしここではどうやってもサボれなかった。
レールは1年に数回故障するくらいだったが、それもすぐに管理の人間が直してしまう。
工場の中で人間模様のドラマが起きるとは、到底考えられなかった。
それでも、この日々が劇的に進化出来る事は無いか、考えた。
私は、隣で作業をする男と話してみようと思った。何か、気の利いたジョークでも言えれば、それだけで何かが起こっている気がすると思ったのだ。
隣の男は私と同じくらいの年齢で、腰まで伸び切った長髪を後ろで束ねていた。きっとバンドマンか何かの人間なんだろう。
私は彼が食いつきそうな音楽の話からしようと試みた。
「音楽とか好きですか?」隣の男は、突拍子も無いヤツだなという顔をしながら、こっちを向いた。
「いや、全然。」と男は返した。会話はそれで終わってしまった。
私は、面倒になったのでそのまま作業に没頭した。
その日は前日の不可思議な出来事と工場での労働で疲れていたが、このまま帰ってしまうのがなんだか勿体ない気がしたので、バスへは乗らずに歩いて帰る事にした。
無機質で連続的な機械音の鳴る工場地帯、ここは或る意味での安堵を与えてくれた。仕事を終えた外国人の人々が陽気そうに私の前を通りすぎていった。
彼や彼女は、何を思い、喜び、苦しみ生きているのであろう。昨日の出来事に似た、一種の浮遊感を持ったまま私はひたすら歩き続けた。
少しだけにぎわった商店街へやってくると、強い風が吹いた。少し咳き込んで辺りをみまわすと、バーがあったので、階段を下り入っていった。
中は労働者達でいっぱいだった。たいていの客は焼酎をコップで飲んでいた。私はスコッチの水割りを注文した。かなりの距離を歩いたからか、汗ばんでいた。
飲みながら、フィッシュ&チップスを注文した。黙々と食べ、飲み続けた。頭の中ではジミー・リードのブルースが流れていた。
店内でもめ事が起きているようだったけど、誰も私を邪魔しなかった。
ビールをチェイサーにスコッチを5杯飲んだ。今日の給料の半分を使ってしまった。
バーカウンターの席にもたれながら、
私は間接照明の光と闇の境目を探していた。全く客通りの無いバーで、スコッチを飲んでいる。
酒の酔いは、明日にも必ず何かを齎してくれるようで、希望がわいてくる。
グラスを手に取ろうと、ゆっくりとした手つきで、緩く結んだ手の指先をゆっくりと順に伸ばした。
「アン・ドゥ・トロワ」と心で言ってみた。「私は死ぬまでにこの動作を何度するであろう。」
そんな疑問も織り交ぜ、グラスを左手の薬指と中指に力点を加えた。テーブルには、ジンの水滴が雨の跡のように三日月を象った。
私はわざと「ゴクリ」と音を立てジンを飲んだ。店を出て、家に帰りシャワーを浴びた。ベッドでうとうとしながら映画を見ていると、アオイと自分の関係に何があったであろう。そんな思いが交錯していた。
…部屋で私は泣いていた。意味も無く泣いていた。
ひとしきり泣き終えると、窓ガラスから空に飾ってあった雲と太陽が私の部屋へ舞い込んだ。
霧で覆われた見えない部屋の中で私は泣いていた。
手を伸ばすと誰かの髪の毛に触れた。私は異性だと直感で解った。
その人を半ば強引に掴み、抱き寄せると、涙は涸れていた。
女はいつかの恋人にそっくりだった。中学生の頃か、若い頃の思い出と共に。
彼女の事、ずっと振り回したままだった。私が遊び疲れた頃に顔をのぞかせた。
孤独がなかった頃、私は彼女を振り回して楽しんでいた。
彼女は決して泣かなかった。彼女は強く、優しかった。
誰かの本で読んだ事があった。本当の不良とは優しさの事ではないかと言う事に。
真っ白い目覚めが私を連れていってくれた。
釣りにでかけた。島国の沿岸部で育ったので魚の事はよく知っていた。
私は大きな魚を釣り上げた。次々に。隣で、彼女が喜んだ。
私も喜んだ彼女を見て喜んだ。
そして、大きな獲物がかかった。同時に水平線の向こうから暗雲が立ちこめた。
雷が鳴り、嵐が来た。しかし、私はこの大きな獲物をつり上げたいと願った。
私は隣にいる彼女に其れを伝えた。彼女は雨宿りにその場から去った。
とうとう、私は獲物と一対一となった。右に大きく引っ張ると、私は釣り竿を左へ。
釣り糸が悲鳴を挙げる。私は釣り竿を持ち上げては巻き上げ、力の一杯を相手に向けた。
するとどうだろう、獲物が動かなくなった。私はチャンスだと思い、思い切り釣り竿を引っ張った。
海の中には大きな獲物が水面でくたばっている。私はここで疑問が浮かぶ。
「魚影じゃない!!人だ!」その声に反応するように相手が動き回る。しかし、水中であれだけの動きを出来るなんて人魚か河童か半魚人だ。
どっちにしたって勝負は始まっているんだ。勝つか負けるかだ。それから私たちの死闘は1時間以上にも渡った。
辺りは手元すら見えにくい程、暗くなっていた。
雨や風、雷も相変わらず酷かった。相手はまだ完全に、くたばらない。疲れたふりをしてはいきなり針を外そうと、躍起になる。そこで、私は足下に転がっていた銛を右手に構えた。
左手で一気に獲物を海面まで引き上げると、思いっきり銛を投げつけた。これには獲物もまいったらしく、しばらく海面に浮かんでいた。
そこで、網をつかいヤツを力いっぱい持ち上げた。五十キロはあろう獲物を遂につり上げた。
水で滴るコンクリートに寝そべる獲物を凝視する。顔面にが白くペイントされていて、痩せた頬に涙や菱形がペイントしてある。
「ピエロだ!」私は思わず後ずさりをしてしまった。ピエロはカッと目を見開き私の口元をやたらと大きい手で掴んだ。私はもがいた。しかしもの凄い力で押さえつけられ、気を失った…
午前三時に目が覚めた。喉がカラカラだった。台所へ行き、水を飲む。
「にしても、ひどい悪夢だった。」と呟いた。あのおぞましいピエロの表情を思い出すと、悪寒が体中を巡った。
臆病な私は早い所ベッドに行って眠りについてしまおうと思った。しかし、急激に腹が痛くなってきた。今すぐにでもトイレに駆け込まなければならなかった。
しかし、先ほど見た奇怪な夢のピエロがトイレの扉を開けた瞬間にいたと想像すると、とても恐ろしくなった。
しばらく、台所でうずくまり腹の具合が良くなるのを待ってみたが、以前にも増して腹痛は悪化するばかりであった。
もうこれ以上、腹痛を放っておけない状況にまで達してしまったので、トイレへ行く事を決意した。
這いずりながらトイレへ向かい手を伸ばし電気を点けた。そして扉をあけるといつもと変わる事の無い便所があった。
一安心し、便座に腰を落とし肛門を力一杯振り絞った。濁った擬音と共に、尻が暴発した気がした。
天を仰ぎながら「ぐぉぉぉぉぉぉぉ!」と言う声を挙げ私は体の内蔵全てを出す勢いで、排便にすべてをかけた。
出てきた汚物は、便所のありとあらゆる方向へ飛び散った。
やがて腹痛も去り、全ての問題は解決されるかのごとく水に流されていった。
私は洗面台で先ほどの恐怖が消えている事に人間の浅墓さを知った。生理現象に勝る恐怖の事物はあるのであろうか?
飢えている時に人間は、どんな奇怪なものが海で釣れたとして、それを食べられるかどうかと考えてしまうのでは?
きっと自分で考えているよりも人間は動物的なんだと思った。
そうこうしている内にベッドへ戻ると、午前4時前だった。眠れそうになかったので再び台所へ行き、机の上に安物のポートワインを並べた。
飲みながら先日観た海で飛ぶカモメと街で飛ぶカラスの違いについて考えた。誰も私の思考を邪魔するヤツは居なかった。
少し気分がノッて来たので、ジョーターナーのレコードをかけた。家に帰ろうと言った意味の歌を唄っていた。
女、金、若さ、未来、私に無いもの全てだった。いつも小説を読むかのごとく自分の人生を客観視していた。
その結果が工場員。立派なもんじゃないか。幸い住める家と友達がいる。いつしか、私は自分には生きる価値がないという事を知ったふりをしてしまった。
あくまでもふりなので、それが物事の本質を掴んでいるかどうかは定かではなかった。空けたポートワインが半分を過ぎたころ、カーテンの隙間からこぼれる朝焼けが目についた。
私はマンションの屋上へ行き、朝日を肴にワインを飲んだ。太陽をみていると自然と涙がこぼれ落ちた。最近、泣いてばかりだ。
いや、酔ったせいであろう。しかし、頭の中では自分の弱さを吐露するもう1人の自分が、過去の自分を攻めた。
あの時ああすれば…などと。負のスパイラルってやつだ。私は気を取り直して、階段を下り、部屋へ戻った。だれが太陽なんて好きなもんか。カーテンを閉め。夜が来るのを待った。
…ある晩の話さ、戸を叩く大きな音がしたので
恐る恐る扉の取手に手をかけ開けると、銃を携えた’星条旗’が立っていたんだ。
その瞬間に全身、痺れて、目眩もした、それはまるで「次はお前だ」と、
名指しで呼ばれたように、佇んでいたわけさ。
後ろめたい事が頭の中で逡巡したよ。十字架にかけられるところで、一旦落ち着くと私は、次の瞬間火の海で笑っていた。それでも惜しいとは思わずに私は抗わずに体を差し出した。この日の為に生きてこれた事に感謝した…
僕だって、そう思う。好き、賛成。じゃあ、結婚する?それは嫌。
あらゆる束縛からは逃れたい。でも、そんな事言ってられる年齢?
まぁ、そうだけど。でも、嫌なんだ。屈しない。それだけ。
解った君の言いたい事。少しだけど、足しにして。笑えるね。笑えない。
所謂、セックス、ドラッグ、ロックンロール?
この時代には順応しないね。皆、オタク。泣けるね。
全てはそれから。興味ないヤツには興味ない。
風がアナタを遮るかも知れないけれど、
僕は屈しない。何に対しても屈しない。全員を凌駕出来る。そんな無想。
だけど、彼女、廻る寿司屋を探している、下道ならやってると思ったのに。
生活なんてこりごり。愛だけは正常、だけど、自由。
本当に自由。愛は自由でなければいけない。勝手な哲学。だけど、体は正直。
体の上を滑る女。馬鹿な女。女衒も、儲からない。いや、違う。財布が固い。財布をなくす。
体は嘘つき、体じゃない。もっと高尚な部分。愛って何?嘘?いや違う。生活と愛。
僕らはただ、海を眺めていた
気がつくと、ポートワインを三本が机に転がっていた。
こんなに飲んだのか。合法と言われている酒だが量を飲み過ぎてしまうと、非合法って事になりかねない。
自分に向かって弁明をしたくなってくる、人生は後退を許さない。スピードが肝心だ。
多くの人間にとってそれがどれだけの重要な位置を占めるのか解らないが、スピードが大事なんだ。
実際、昨晩観た夢は早かった。速度という言葉すら超える意識、僕はそれを探しているのであろうか。でも、目的なんか、とうの昔に失っていた。僕はただ自分が存在するという罪を背負ってこれからも生きていかねばならない。それが解ったのは、まだハイスクールに通っている時だった。僕はあれからどれだけ成長をしただろうか。そんな事考えながら、何も無いという幸せに浸っていた。それに浸りすぎたのは、言うまでもないけど。要するに、僕はぬるま湯を自分で創り、そのスピードに慣れてしまったのである。なんとも馬鹿げた話だ。落とし穴を自分で掘って、はまっているようなものか。どうにかしたくても、体ってものは自分の思い描く速度には到底着いて来れない。路上生活者の速度と所謂、勤めている人間どちらをとっても、結局自分の速度は変わらないのだ。少し話しすぎた。夜まで待つ事にした。
やがて夕闇が辺りを包み始めた。
私はそれまで眠りについていた。退屈が芸術だなんてかったるい事はやめようぜ。
それから少しだけ、スプーン一杯の何かがあれば変われるんだから。夕闇の中、散歩に出かける事にした。玄関脇に炊飯ジャーがあったので持って出かける事にした。こんな見事な炊飯ジャーが家にあっったなんて、すっかり忘れていた。ここ二年間僕は米を口にしていない。パスタやパンばかり食べているのだ。それでも、米を食ってるときと何かが決定的に変わる事は無かった。
炊飯ジャーを小脇に抱え、近所のリサイクルショプへと行き、自分が好きか自問自答した。嫌いだった。そこから、炊飯ジャーを金に換えようと、店主らしき人に声をかけた。
三千四百円になると言われたので、了承して同意書にサインをした。
僕は、眠りたかった。少し寒かった。それでも気にせずに歩いていると、だんだん眠気が本物になって来た。歩いていると体は暖まってきた。眠気はそのままだった。あまり行かない方角の商店街だった。もの凄く寂れていた。商店街の中で気休めのように佇むベンチで少し休んだ。コーヒーが飲みたかった。再度、歩き出した。街灯にコウモリがぶつかる音がした。明日は仕事があるので、帰って休むことにした。帰途、サーカスの道化師を連想しながら歩いた。
ある日のはなし3
「気がついた?」椅子の後ろ側からリルの声がした。「なんでこんな事を?」私は強く訴えかけた。幸いにも目と口の自由は奪われていなかった。
「いいから、私の言う通りにして。今からルームにいる現実へ行くべきあなたをここへ連れてくるわ。本来、人間は生まれ落ちた瞬間に魂は全て、このルームに来るハズなの。しかし、現実で君は睡眠してる最中に偶然にもルームにきてしまったの。無意識と魂はとても近い存在なの。そこで、君は魂と肉体の同化をしてしまったの。魂といっても、量子レベルでは肉体と交じり合う事は可能なの。」
項垂れながら「僕にはわからない」と言った。こんな訳のわからない女に付き合ったばかりに、こんな目に遭うなんて。僕は過去を後悔した。
「とにかく、現実に居る時にあなたは無意識を愛していたのよ。社会には社会のルールがあるでしょ?植物と人間の会話はあってはならないものなの。互いに居場所があり、それをお互いで尊重しあうの。それが共存と言うことなの。」アオイは言い切ると、私の正面に立ち目を瞑り集中し始めた。部屋が横に揺れ始めた。アオイから煙がモクモクと立ち上り周辺は真っ白に覆われた。私は煙でむせ返った。
煙がだんだんと一点にまとまり人体の形に象られていった。やがてぐったりとした裸の私が出現した。顔も体もどこをどうとっても私と同一の存在だった。
もう1人の私は呻き声を挙げながら、涎と涙を垂らしながら倒れていた。どうにか立とうと、努力をしているのだが力なく崩れ落ちた。
「これがもう1人のあなたで無意識に準ずるあなたよ。しかし、現実のあなたが観た夢で混じりあってしまい、こっちの世界で意識をもってしまったの。本来あってはいけないものをね。これからあなたたちを1つの存在にして、有意識と無意識に分別するわ。そしたら元の世界に返してあげる。絶望する事はない。」
「元の世界に帰れる!」私はそう思うと幾分か安堵の気持ちを得た。非現実の状況に陥っているからか、自分はこのまま助かる筈が無いと勝手に決めつけていた。
アオイが人体量子化銃をもう1人の私に向けて構えて、発射した。緑色の怪光線が銃口から放たれた。
もう1人の私は呻きに似た悲鳴を上げ、辺りに体液をまき散らした。次第に丸められた粘土のように変化していった。
もう1人の私が丸められた粘土のようにされると、アオイは私に向けて怪光線を放った。私は、次第に丸められた粘土のようにポロポロと細胞が変化していく事を見届けた。
密室空間は、私の細胞で散らかっていた。アオイは私の細胞をコツンと蹴った。ころころと転がり、拘束椅子にぶつかった。
私の意識は不確かではあったが、そこにはあった。まるで全ての思い出や認識が、幻であるように。
アオイは私の体を大雑把に分別しはじめた。それから望む行為をはじめた。「キェッー!」とアオイが叫ぶと、次から次に丸い粘土のような細胞が集合し、まとまっていった。
私の体が構築されていった。そこには快楽が伴った。私は声を上げて己の体が構築されるのを感じた。
アオイは冷たい眼差しで私を確認すると「リンゴだせる?」と尋ねてきた。
私は先ほど練習した要領で、リンゴを望んだ。しかし、いくら念じてもそれが出る事はなかった。
体に異常はみられず、意識はいつも通りあった。アオイが「おめでとう」と言った。私にはそれが何か解らなかった。
「よし、もうすぐ終わるから待ってて。」そして、アオイが再度望むと私の無意識の細胞は、大きな木になった。
アオイの額は汗でいっぱいだった。心なしか目元に疲れがあった。どうやら望むという行為は、体力を使うらしかった。
アオイの望むによって木になった私の無意識の細胞は空中に浮かび、ゆらゆらと密室内を彷徨っていた。
それから、「クワッー!」と絶叫するとアオイの体がピンク色に染まった。
アオイは荒い呼吸をしながら「やっと一緒になれるね。今までありがとう、じゃあね。」とだけ言い、空間に昇華されるように消え入った。
それと同時に、密室空間が無くなり、真っ白い空間に戻った。私1人と木が残されていた。しばらくぼーっと木を眺めていると、浮遊している木に花のつぼみが付き、遂には満開の桜となった。
とても綺麗な桜だった。気づくと感動の涙を流しながら自宅のベッドで眠っていた。私は起きあがり、机の上に置いてあったタバコを吸い、台所で水を汲み頭痛薬を飲んだ。
洗面所にはアシッドがちぎられた状態で置いてあった。空き瓶のウイスキーが転がっていた。時計を見ると、午後0時だった。
私は起こった出来事について言えるとすればそれは単なる現実でしかなかった。触感や目にしたもの、全ては受け入れがたい事であったが、私は見てしまったのだ。
自分の中で変わった所は無かった。体調も優れていた。私は白いシャツに腕を通し、黒いスラックスをはき、モッズコートを羽織った。